アラフィフ世代になると、自分の老後だけでなく、親からの相続や、自分が亡くなったあとの子どもへの資産承継も現実的なテーマになってきます。結論からいうと、子どもに資産をより多く残したいなら、相続時精算課税を「亡くなったあとにまとめて渡す」ための制度ではなく、「生前に少しずつ移すための制度」として賢く使う発想が重要です。
この記事では、被相続人になる側の立場から、相続時精算課税の基礎控除110万円をどう活用するとよいか、どんな家庭に向いているか、注意点は何かをわかりやすく整理します。
先にポイントをまとめると、令和6年1月1日以後の相続時精算課税には年110万円の基礎控除があり、この範囲の贈与は相続財産への加算対象にもなりません。つまり、毎年110万円ずつ子へ移せば、10年で子1人あたり1,100万円分、子2人なら2,200万円分の財産を相続財産の外へ移しやすくなります。
アラフィフ世代が相続時精算課税を考える前に押さえたいポイント
- 親からの相続を考える時期は、自分の相続対策も始めやすい時期
- 相続時精算課税は、60歳以上の父母や祖父母などから18歳以上の子や孫などへ贈与する場合に選べる
- 令和6年1月1日以後の贈与から、相続時精算課税にも年110万円の基礎控除がある
- この110万円部分は、贈与税だけでなく相続時の加算対象にもならない
- ただし、一度選ぶと同じ贈与者について暦年課税に戻せない
相続時精算課税は「子により多く残す」ための制度として使える
相続時精算課税という名前だけを見ると、相続のときに税金を精算する制度という印象が強いかもしれません。もちろんその理解は間違っていませんが、令和6年からは基礎控除110万円が加わったことで、「毎年少しずつ子へ移す」手段としての使い勝手が大きく変わりました。
特に、これから10年、15年と資産承継を考えたいアラフィフ世代やその上の世代では、この制度を早めに使うかどうかで、将来子に残せる財産の形が変わる可能性があります。
いちばん大事なのは「基礎控除110万円」
毎年110万円まで子に移せる
令和6年1月1日以後の相続時精算課税では、年110万円の基礎控除があります。被相続人になる側から見れば、子どもへ毎年110万円までの贈与を進めやすくなったということです。
以前の相続時精算課税は、少額の贈与でも使い勝手がよいとは言いにくい制度でした。しかし今は、110万円以下の贈与であれば申告不要となるケースがあり、少しずつ移す戦略が取りやすくなりました。
10年で子1人あたり1,100万円分を移しやすい
たとえば、子1人に対して毎年110万円ずつ10年間贈与すれば、合計1,100万円です。これは、将来の相続時に相続財産へ加算しないで済む余地がある金額です。
そのため、相続税がかかる水準の家庭では、課税対象になり得る財産を1,100万円分圧縮できる可能性があります。子が2人なら、同じ考え方で2,200万円分です。
ここで重要なのは、「1,100万円の相続税が減る」という意味ではなく、「相続税の対象になり得る財産を1,100万円分減らしやすい」という意味だという点です。実際にどれだけ税額が下がるかは、財産総額や相続人の数で変わります。
なぜアラフィフ世代こそ考えたいのか
親の相続をきっかけに自分の承継も現実味を帯びる
アラフィフ世代では、親の相続を考え始める人が増えます。そのタイミングで初めて「相続は突然起きる」「準備しないと家族が困る」と実感することも多いです。
だからこそ、自分が被相続人になる将来を先取りして、今のうちに子へ資産を移す準備を始める意味があります。
まだ時間を味方につけやすい
相続対策は、亡くなる直前にまとめて考えるより、数年から10年単位で進めるほうが有利になりやすいです。毎年110万円ずつでも、期間をかければ移せる金額は大きくなります。
「まだ早い」ではなく、「まだ時間があるからこそ動ける」と考えるほうが現実的です。
相続時精算課税を賢く使うイメージ
子1人なら10年で1,100万円分
毎年110万円ずつ贈与できれば、10年で1,100万円分の財産移転になります。相続税のかかる家庭では、この分だけ将来の課税財産を減らす効果が見込みやすくなります。
子2人なら10年で2,200万円分
子が2人いるなら、同じように毎年それぞれ110万円ずつ贈与することで、10年で合計2,200万円分の財産移転を考えられます。
現金でそのまま渡すだけでなく、家族の状況によっては教育費や住宅資金の一部を生前に支える発想にもつながります。
相続時精算課税のメリット
子に早く資産を渡せる
相続まで待たずに資産を移すことで、子ども世代が必要な時期に使いやすくなります。親が元気なうちに渡せること自体が大きな意味を持つこともあります。
将来の相続財産を圧縮しやすい
基礎控除110万円を毎年活用すれば、長い目で見て相続財産を減らしやすくなります。相続税対策としても考えやすい制度になりました。
少額贈与でも使いやすくなった
改正前よりも、毎年の少額贈与を続ける前提で使いやすくなっています。「まとまった資産を一気に移す人だけの制度」ではなくなりました。
相続時精算課税の注意点
一度選ぶと戻せない
相続時精算課税は、選んだあとに「やっぱり暦年課税に戻したい」とは原則できません。同じ贈与者からの贈与は、その後も相続時精算課税で管理することになります。
2500万円の特別控除とは別に考える
今回の話の中心は110万円の基礎控除です。一方で相続時精算課税には累計2500万円の特別控除もありますが、こちらは相続時に精算する前提の枠です。
そのため、「110万円も2500万円も全部きれいに非課税」と理解するとズレます。まずは毎年110万円の使い方を軸に考えるほうがわかりやすいです。
本当に得かは家族構成で変わる
もともと相続税がかからない水準の家庭では、税額面の効果は限定的なこともあります。相続税の節税だけでなく、「早く渡す意味があるか」もあわせて考えるべきです。
こんな人に向いている
子に資産を計画的に残したい人
「亡くなったあとにまとめて残す」だけでなく、「元気なうちに少しずつ渡したい」と考える人に向いています。
相続税が気になる人
財産総額が相続税の基礎控除を超えそうな家庭では、早めに財産移転を始める意味があります。
今後10年単位で動けそうな人
この制度の強みは、毎年の積み上げです。数年で終わるより、10年近く続けられる人のほうが効果を出しやすいです。
こんな人は慎重に考えたい
制度をよく理解しないまま始める人
相続時精算課税は、使い方を誤ると「戻せない」ことが重くなります。非課税という言葉だけで決めないほうが安全です。
生活資金まで贈与してしまう人
自分の老後資金が不安定なのに、生前贈与を急ぎすぎるのは危険です。まずは自分の生活を守れることが前提です。
相続時精算課税を始める流れ
STEP1 子どもに渡せる余裕資産を確認する
まずは、自分の老後資金を減らしすぎない範囲で、毎年いくらなら渡せるかを確認します。
STEP2 受贈者の条件を確認する
子どもが18歳以上か、贈与者が60歳以上かなど、制度の対象要件を見ます。
STEP3 最初の年に届出を出す
相続時精算課税を使うには、最初の贈与の翌年3月15日までに相続時精算課税選択届出書などを提出する必要があります。
STEP4 毎年110万円を計画的に移す
単発で終わらせるより、毎年110万円を続ける前提で考えるほうが制度を活かしやすいです。
よくある質問(FAQ)
Q. 毎年110万円を子に渡せば、その分は相続税の対象から外れますか?
令和6年1月1日以後の相続時精算課税では、年110万円の基礎控除部分は相続財産への加算対象に含めない扱いです。ただし、実際の適用関係は贈与年や個別事情で変わるため、国税庁の案内や税理士確認が安全です。
Q. 子が2人なら毎年220万円まで移せますか?
子2人がそれぞれ制度の対象要件を満たすなら、各人に年110万円ずつ移す考え方は可能です。10年続ければ、合計2,200万円分の財産移転を考えやすくなります。
Q. 2500万円の特別控除も一緒に使えますか?
相続時精算課税には累計2500万円の特別控除があります。ただし、こちらは相続時に精算する前提なので、年110万円の基礎控除とは意味合いが異なります。
Q. いつから始めるのがよいですか?
毎年の積み上げが効く制度なので、条件を満たしていて無理のない範囲で動けるなら、早いほうが有利になりやすいです。
参考にしたい公式情報
まとめ|相続時精算課税は「毎年110万円を子に移す」視点で使うとわかりやすい
相続時精算課税は、相続直前の制度ではなく、生前に子どもへ資産を移していく制度として見ると使い道が整理しやすくなります。
- 令和6年以後は年110万円の基礎控除がある
- この110万円部分は相続財産への加算対象にもなりにくい
- 10年で子1人あたり1,100万円分、子2人なら2,200万円分の資産移転を考えやすい
- ただし税額効果は財産総額や家族構成で変わる
制度は放置するより、理解して使ったほうが強いです。自分の老後資金を守りながら、子により多く残すための手段として、相続時精算課税を早めに検討する価値はあります。

